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国立病院機構 東京病院

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外来診療予約センター

Tel.042-491-2181

呼吸器外科

手術治療

原発性肺癌

 昨今、Evidence-Based Medicine(EBM)というものが提唱されています。肺癌の治療に関しては「肺癌診療ガイドライン」が2003年に初めて発行され、2011年以降は毎年改訂されてきています。 日本全国の呼吸器内科医・呼吸器外科医がこのガイドラインに基づき、治療方針を決定していますので、特殊な肺癌や多数の併存疾患をお持ちの患者さん以外は施設毎で治療方針に大差はないと考えられます。 原発性肺癌の病期分類や切除後の予後などに関しても巷に情報が溢れていますので以下のサイトを参考にしてください。

日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン
https://www.haigan.gr.jp/publication/guideline/examination/

国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html

 当院においても大まかな肺癌の治療方針に関しては世の中の病院と大差はないと思いますが、それでも患者さんひとりひとりの状況は違います。 当院では肺癌カンファレンスとして、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科が一同に会して治療方針を決定しています。 急激に進歩している肺癌治療ではありますが、肺癌の根治を目指すためには今現在も外科治療が必須です。

 2022年から末梢小型肺癌(0期やI期の一部)に関して、これまでの標準術式(根治手術)であった肺葉切除+リンパ節郭清から区域切除+リンパ節郭清に変わりました。 まだ小さな、転移しそうにない肺癌に対しても、大きく切除することで根治性を担保していましたが、損なわれる呼吸機能を考慮し、同等の根治性で、 なおかつ呼吸機能の温存を目指した区域切除を標準術式とする全国的な流れがあるからです。
 硬くなった(線維化の強い)I期からIIIA期の一部の非小細胞肺癌の標準手術は現在でも肺葉切除+リンパ節郭清です。 基本的には胸腔鏡と呼ばれる内視鏡にて胸腔内をモニターに映し出しながら行います。 従来の開胸手術より、手術創が小さく、呼吸筋の損傷も少ないので、術後の回復が比較的早いことが特徴です。 当院ではこれまで3カ所の孔での胸腔鏡手術を基本としてきましたが、さらなる疼痛の回避や整容性を求めて、孔の数を2か所もしくは1カ所ですむ胸腔鏡手術を開始しております。 ただし、隣接臓器の合併切除が必要となる進行肺癌には胸腔鏡ではなく、従来の開胸による手術で行っております。
 リンパ節転移が多数見られるIIIA期から遠隔転移のあるIV期にかけての非小細胞肺癌の場合は呼吸器内科にて化学・放射線治療を先行し、 明らかに肺病変が縮小した場合、もしくは転移巣の拡大がない場合には切除対象とすることがあります。以前は手術対象まで病巣が縮小することが多くなかったのですが、 近年は分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などの従来とは違った機序による化学療法が開発されてきており、内科治療の後に手術する患者さんも増えてきています。

従来の胸腔鏡手術(3カ所の手術創)

従来の胸腔鏡手術
(3カ所の手術創)

HCUスタッフ

単孔式胸腔鏡手術
(すべての器具を一つの孔から挿入)

炎症性肺疾患

 特に手術対象となるものは肺非結核性抗酸菌症、肺アスペルギルス症、膿胸などです。細菌が原因の病態であるため内科治療が主体ですが、内科治療にも限界があり、病巣を切除することで極端に菌量を減少させ、 それ以上病巣を広げないように手術が必要となることがあります。これらの疾患に対し精通した呼吸器内科との緊密な連携があるが故に外科治療を行うことが出来ます。炎症性肺疾患と言えば「清瀬の東京病院」と言われる由縁です。 肺癌に対する外科治療が主流となった今、炎症性肺疾患に対してきちんとした治療を行うことが出来る数少ない施設であるため、遠方から紹介される患者さんもいらっしゃいます。
 これまで炎症性肺疾患に関しては伝統的な呼吸器外科の切開創で行われることが普通でした。具体的には30-40㎝くらいの背中の傷、後側方切開です。 2012年より胸壁との癒着が軽度の場合には可能な限り完全胸腔鏡下手術を行うことにしております。 切除した肺を摘出するための5㎝以下の傷と1㎝程度の傷2か所の計3か所の傷で行い、術後のダメージを極力少なくなるように努力しております。
 ただ、炎症性肺疾患は胸腔内で炎症を起こしているので、胸腔内の癒着が酷い状態であることも多くあります。胸腔鏡のカメラも挿入出来ないような胸腔内癒着がある場合には従来の開胸方法になります。

縦隔腫瘍

 胸の中心にある、左右の肺に間の空間を縦隔といい、胸腺、心臓、大血管、食道、気管などが含まれます。それらの臓器に由来して出来る腫瘍を縦隔腫瘍といいます。 縦隔腫瘍切除に多く用いられてきた到達方法は胸骨正中切開法というもので、いわゆる心臓手術と同じく、胸骨を割って行う方法です。 この方法は腫瘍までの到達距離は近く、他臓器への浸潤などにも対応可能で汎用性が高いのですが、創が大きく、胸骨を割らなくてはならないため、侵襲は大きくなります。 術前に腫瘍が良性であることが判明している場合には大きさにもよりますが、胸腔鏡による側胸部からの切除が可能である場合が多いです。縦隔腫瘍で多いのは胸腺腫ですが、 腫瘍による周辺臓器への浸潤がなければ、胸腔鏡下切除で行っています。美容面、痛みなどを鑑みた場合にはお勧めできる方法だと思われます。

気胸

 肺に穴が開いて、肺が虚脱する病気ですが、若年者(40歳くらいまで)と高齢者とでは肺の状態が大きく違います。若年者の気胸はいわゆる「やせ型の若い男性」というのがイメージで、原因ははっきりしません。 肺の一部に嚢胞(ブラ)と呼ばれる小さな袋状の隆起が出来て、これが破裂して起こります。周囲の肺自体はほぼ正常なので、この嚢胞を切除することで、空気が漏れて肺が虚脱する原因を除去できます。 胸腔鏡にて行い、手術日程次第では最短4日の入院となります。高齢者の気胸の多くは喫煙による肺気腫を併存しており、破裂する可能性のある嚢胞が多発しています。もしくは間質性肺炎や肺癌が存在することもあります。 破裂した肺を切除することで容易に空気漏れが止められない可能性もあり、全身麻酔をかけるのに問題となる併存疾患があることも多いので、手術に際しては十分な評価が必要です。

当科における手術症例数(一部抜粋)

年度 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年 2025年
手術総数 168 143 123 139 144 169
 胸腔鏡手術 128 103 102 104 108 121
肺悪性腫瘍 76 66 55 68 54 69
 原発性肺癌 70 62 55 68 54 63
 転移性肺癌 6 4 3 3 0 6
炎症性肺疾患 33 20 14 32 27 35
 非結核性抗酸菌症 15 5 5 18 17 19
 アスペルギルス症 10 7 4 5 7 6
縦隔腫瘍 3 2 6 6 4 9
 胸腺腫 2 1 2 3 2 6
嚢胞性肺疾患 28 26 24 16 36 27
 気胸 27 26 24 16 36 27
膿胸 12 17 9 12 9 11
(2020-2022年は新型コロナのため、手術制限あり)
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