呼吸器外科
手術治療
原発性肺癌
昨今、Evidence-Based Medicine(EBM)というものが提唱されています。肺癌の治療に関しては「肺癌診療ガイドライン」が2003年に初めて発行され、2011年以降は毎年改訂されてきています。日本全国の呼吸器内科医・呼吸器外科医がこのガイドラインに基づき、治療方針を決定していますので、特殊な肺癌や多数の併存疾患をお持ちの患者さん以外は施設毎で治療方針に大差はないと考えます。原発性肺癌の病期分類や切除後の予後などに関しても巷に情報が溢れていますので以下のサイトを参考にしてください。
日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン
https://www.haigan.gr.jp/modules/guideline/index.php?content_id=3
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/index.html
当院においても大まかな肺癌の治療方針に関しては世の中の病院と大差はないと思いますが、それでも患者さんひとりひとりの状況は違います。当院では肺癌カンファレンスとして、呼吸器内科、呼吸器外科、放射線治療科が一同に会して治療方針を決定しています。急激に進歩している肺癌治療ではありますが、肺癌の根治を目指すためには今現在も外科治療が必須です。
2022年から末梢小型肺癌(0期やI期の一部)に関して、これまでの標準術式(根治手術)であった肺葉切除+リンパ節郭清から区域切除+リンパ節郭清に変わりました。まだ小さな転移しそうにない肺癌に対しても、大きく切除することで根治度を担保していましたが、損なわれる呼吸機能を考慮し、同等の根治度でなおかつ呼吸機能の温存を目指した区域切除を標準術式とする全国的な流れがあるからです。
I期からIIIA期の一部の非小細胞肺癌の標準手術は肺葉切除+リンパ節郭清です。基本的には胸腔鏡と呼ばれる内視鏡にて胸腔内をモニターに映し出しながら行います。従来の開胸手術より、創は小さく、呼吸筋の損傷も少ないので、術後の回復は比較的早いことが特徴です。ただし、隣接臓器の合併切除が必要となる場合には胸腔鏡ではなく、従来の開胸による手術で行っております。
リンパ節転移が多数見られるIIIA期から遠隔転移のあるIV期にかけての非小細胞肺癌の場合は呼吸器内科にて化学・放射線治療を先行し、明らかに肺病変が縮小した場合、もしくは転移巣の拡大がない場合には切除対象とすることがありますが、かなり進行した状態ですので、手術による根治は難しい段階にあります。
炎症性肺疾患
これまで炎症性肺疾患に関しては伝統的な呼吸器外科の切開創で行われることが普通でした。具体的には30-40㎝くらいの背中の傷、後側方切開です。2012年より胸壁との癒着が軽度の場合には可能な限り完全胸腔鏡下手術を行うことにしております。切除した肺を摘出するための5㎝以下の傷と1㎝程度の傷2か所の計3か所の傷で行い、術後のダメージを極力少なくなるように努力しております。
ただ、炎症性肺疾患は胸腔内で炎症を起こしているので、胸腔内の癒着が酷い状態であることも多くあります。
胸腔鏡のカメラも挿入出来ないような胸腔内癒着がある場合には従来の開胸方法になります。
縦隔腫瘍
気胸
当科における手術症例数(一部抜粋)
年度 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|---|---|---|
手術総数 | 215 | 168 | 156 | 134 | 135 |
肺悪性腫瘍 | |||||
原発性肺癌 | 88 | 68 | 66 | 56 | 56 |
転移性肺癌 | 5 | 6 | 6 | 2 | 2 |
炎症性肺疾患 | |||||
非結核性抗酸菌症 | 23 | 16 | 10 | 4 | 6 |
アスペルギルス症 | 16 | 10 | 10 | 3 | 6 |
縦隔腫瘍 | |||||
胸腺腫 | 4 | 4 | 2 | 2 | 2 |