部門紹介

肺循環・喀血センター

  • 概要
  • 診療体制
  • 対象疾患
  • 検査
  • 受診方法
  • スタッフ紹介
  • 概要

     新年度を迎え私たちは肺循環・喀血センターを開設し、パワーアップして患者さんへの医療提供の向上に努めてまいります。今までの喀血治療部門では、国際学会での発表や国内外医学誌への論文投稿などで診療実績の報告をし、患者さんへの医療提供とともに喀血治療に尽力してまいりました。この度、肺循環分野まで診療を拡大し、患者さんのニーズに益々お応えできるよう最善を尽くす所存です。私は呼吸器科医長をやっております守尾嘉晃です。肺循環・喀血センターの開設にあたり、センター長を拝命いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
     はじめに皆さんは「肺循環」についてご存知でしょうか。「肺循環」は、右側の心臓にある右心室の出口につながっている肺動脈から、左右の肺の血管を流れて左側の心臓にある左心房まで戻って来る肺静脈までの血流路です。それに対して、左側の心臓にある左心室の出口につながっている大動脈から、いろいろな臓器と全身の血管を流れて右側の心臓にある右心房まで戻って来る大静脈までの血流路を、「体循環」と呼びます。「肺循環」は、出生前の胎児には血流がなく、出生直後に血流が始まり、肺の発育とともに発達します。「体循環」の血流はいろいろな臓器や血管に分かれますが、「肺循環」では全身から戻って来る血流の全てを受けとめています。「肺循環」の血圧は、血管がしなやかであるため、「体循環」と比べて6分の1以下と低いことが知られています。また血液中の酸素分圧または濃度が低くなると、「体循環」の血管は拡がるのに対して、「肺循環」の血管は縮む現象があります。このように同じ体にある血管でも、「肺循環」と「体循環」では違いがあります。
     「肺循環」にみられる疾患の一つに肺高血圧症があります。肺高血圧症は様々な原因で出現し、現在その病型は大きく5つに分類されます。主要疾患としては肺動脈性肺高血圧症があり、左側の心臓の機能障害で出現する肺高血圧症、慢性血栓塞栓による肺高血圧症などがあります。東京病院の呼吸器科での診察で、間質性肺炎やCOPDの患者さんにも肺高血圧症が見られることがあります。多くの患者さんは、易疲労感、息切れ、胸痛を感じて、重症化すると失神もあります。症状だけでは他の肺疾患や心疾患と鑑別ができませんので、胸部CT(コンピュータ断層撮影)、肺機能検査、心臓超音波検査、肺血流シンチグラムなどを行って、様々な肺高血圧症の鑑別をしていきます。最終的にカテーテル検査を行って診断を確定します。カテーテル検査は、股の付け根の大腿静脈または肘の内側の上腕静脈にストローのような径1.5mmのカテーテルを入れて、肺動脈、右心室、右心房のそれぞれの血圧を測定します。また同時に血液中の酸素分圧と濃度も測定します。カテーテル検査の結果を見て、薬物療法や酸素療法の方針を決めていきます。
     私たちは肺高血圧症治療をしっかり行えるシステムづくりとして、循環器科医師と共同で検査を運営しています。肺高血圧症は、1990年代の新規治療薬の開発に伴い内科治療が著しく発展しましたが、依然として難病と考えられ、早期診断と治療が求められています。東京病院へ来られた際には、月曜日午後と木曜日午前は日下圭医師、水曜日一日は私が担当し、違う曜日では診察した医師と速やかに連絡を取って、スムーズな診療を心がけております。これからも肺循環・喀血センターとして、医療提供の向上につながるよう患者さんとともに肺高血圧治療に立ち向かってまいりたいと決意を新たにしております。どうぞよろしくお願いいたします。

     つづいて当院の喀血治療について紹介いたします。私は喀血治療部門の責任者をやっております呼吸器科医長の益田公彦です。はじめに皆さんは「吐血」と「喀血」の違いはご存知でしょうか。吐血は食道や胃などの消化管からの出血で、食道静脈瘤の破裂や胃潰瘍などからの出血で起こります。一方で咳や痰を伴い、肺から気管を伝って出血する症状が喀血です。喀血はほとんどの場合が「体循環」系の動脈血ですので真っ赤な鮮血を呈します。喀血の原因は様々ですが、当院の喀血専門外来に来られる患者さんの疾患を分類してみますと、肺非結核性抗酸菌症や肺アスペルギルス症などの慢性的な感染症が原因で生じるものが全体の半分、気管支拡張症といって気管支に炎症を起こし気管支の破壊で生じてくるものが4分の1を占めます。いずれの疾患も気管支や肺に炎症が及ぶことで、気管支を取り巻いている気管支動脈などが切れて、気管支の中に真っ赤な鮮血が出血して喀血に至ります。
     喀血は大抵の場合は止血剤の内服や点滴をしますが、難治性の場合はカテーテル治療を行います。股の付け根の大腿動脈という血管の中にカテーテルを入れて、出血している肺の血管まで到達させます。このカテーテルの中にさらに径0.8mmの髪の毛ほどの細いカテーテルを入れて、肺の中で出血している一番近い場所まで到達させます。そして切れて出血している血管だけを選択的に詰め物をして出血を止めます。また、ここ10年はCT画像のめざましい進歩があり、身体の中の血管は造影剤を使って簡単に3D構成できる時代になりました。そしてカテーテル治療に使用する医療材料や医療技術の進歩により、カテーテル治療をより安全かつ確実に行えるようになりました。そして東京病院ではこの医療の進歩とともに大喀血で急変される患者さんが激減していきました。
     私たちは喀血治療をしっかり行えるシステムづくりとして、2010年に喀血専門外来を開設し、毎週火曜日に診療を行っています。ほとんどの場合は患者さんが受診されている呼吸器科の先生からのご紹介ですが、中にはインターネットで患者さんご自身が東京病院を検索され来院されることもあります。これからは守尾先生や循環器科の青木先生と力を合わせて肺循環・喀血センターを日本での中心的な治療センターに育て、引き続き患者さんとともに喀血治療に立ち向かってまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

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