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国立病院機構 東京病院

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外来診療予約センター

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消化器外科

当院における大腸がん手術

 本邦における大腸癌の腹腔鏡手術の初例は1992年でしたが、2002年に保険収載されて一般病院で保険診療として行うことが出来るようになり、 2005年以降の大腸がん治療ガイドラインでは標準治療となっています。進行癌に対する治療成績は従来の開腹手術と同等とされており、 手術のキズが小さく術後の回復が早い点で優れた術式であるため、現在ではほとんどの施設で腹腔鏡手術が導入されています。 2021年に内視鏡外科学会が主体で行った全国アンケート調査では、大腸癌の内視鏡下手術の比率は83.8%(35,896/42,850)と報告されていました。

 当院も、かつて大腸癌手術は開腹手術が中心でしたが、2021年から腹腔鏡手術の割合を増やし、昨年は半数以上が腹腔鏡手術でした。 全国の統計と比較すると腹腔鏡手術の割合は少ないのですが、腹腔鏡手術は患者さん側のメリットも大きく、引き続き適応となる方には実施していく方針です。

 年間手術数しかしながら、腹腔鏡手術に向かないとされる方もあります。 大腸がん治療ガイドラインでは、がんの部位・進行度などの病変の要素、肥満度や開腹手術を受けたことがあるかどうかなどの患者さん側の要素、 経験や技量など術者となる側の要素などから腹腔鏡手術にするか開腹手術にするか、総合的に判断する必要があるとされています。 また、腹腔鏡手術は通常手術時間が開腹手術より長く、全身麻酔が必須です。 腹腔内に二酸化炭素を送気して手術を行う空間を作る(気腹といいます)ため、呼吸への影響も出やすいとされています。 当院の特徴として、もともと呼吸器疾患で通院されている方も多いため、そういった患者さんに大腸がんが見つかった場合は、腹腔鏡手術がよいか、開腹手術がよいかをうまく見極める必要があります。 患者さんの呼吸機能が低下している場合や患者さんがご高齢の場合、腹腔鏡手術ではなく、開腹手術の方が適切な場合もあるのです。 このような理由のために当院での大腸がん手術中に占める腹腔鏡手術の割合は60%程度となっていますが、単純に腹腔鏡手術の割合を増やす事にこだわらず、 個々の患者さんの状況に沿った治療方法を提案し、よく説明・相談した上で決めていくことが大事だと考えています。

 現在の全国的な流れとしては、腹腔鏡手術からさらにロボット手術への移行が見られています。ロボット手術は2018年から直腸がん手術が、 2022年から結腸がん手術が保険診療で行えるようになりました、上記のアンケートでも2021年の大腸ロボット支援手術は4,120例で、 大腸癌手術患者の10人に1人程度と報告されています。昨今、当院近隣でもロボット手術の導入を決めた病院が急増しており、 ロボット手術が身近なものとなってきています。自宅から一番近くの病院を受診して、病気を発見され、その場でロボット手術を勧められるといった事が日常となる日は近いかもしれません。 ロボット手術は緻密な手術操作が可能という利点はありますが、治療成績や合併症の起きる割合は腹腔鏡手術とほぼ同等とされており、 一方で、手術時間が長い・コストが高いなどのデメリットもあると言われています(*)。

(消化器外科 北條大輔)

(*)日本大腸肛門病学会ホームページ:大腸癌に対するロボット手術: https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=36

外来担当医師:北條大輔、五十嵐裕一、中田博

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