部門紹介

対象疾患詳細

肺炎

 肺炎とは、何らかの病原微生物が肺に侵入して急性の感染性炎症を来たしたものをいいます。肺炎は、本邦の死亡原因第3位となっており、年間約100,000人以上が死亡しており、その90%以上は65歳以上であり高齢化社会を迎えるにあたり重要な疾患の1つであるといえます。
原因となる病原体の種類により、細菌性肺炎、非定型肺炎(マイコプラズマ肺炎、クラミジア肺炎、レジオネラ肺炎etc)、ウイルス性肺炎、真菌性肺炎、寄生虫肺炎などに分類されます。また、居住する地域で起こる市中肺炎、病院内で起こる院内肺炎、老人ホームなどで起こる施設内肺炎などのような発症する環境による分類もあります。これらから、肺炎を起こした微生物が特定できることがあります。例えば、市中肺炎はグラム陽性菌の肺炎球菌による可能性が最も高く、院内肺炎では、黄色ブドウ球菌または、肺炎桿菌や緑膿菌などのグラム陰性菌の可能性が高くなります。
また免疫不全(糖尿病、悪性疾患、HIV etc)、肺の基礎疾患(肺気腫、間質性肺炎、肺結核後遺症etc)、治療(副腎皮質ステロイド剤、免疫抑制剤etc)の影響でも肺炎に罹患しやすくなり稀な微生物による肺炎を引き起こす場合もあります。当院では、年間約500例の肺炎を経験し、種々の背景因子を考慮し喀痰、血清、尿、気管支鏡などの検査を施行し迅速に診断および治療を行っています。また、予防としてインフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチン接種も積極的に行っています。

結核

 結核は油断ならない病気です。行政、医療関係者そして市民の努力により結核が少なくなってきたことは、喜ばしいことですが、反面、医師も経験不足となり診断や治療はかえって難しいことになります。
当院は結核の基幹病院として、年間400 例以上の結核患者を実地に診断・治療し、難治性結核の治療や手術も行っています。もともと結核療養所であった誇るべき実績があり、ひろく医師の研修や専門性を追求する最先端の結核医療をめざしています。
ひとりひとりの結核をなおすこと、感染を拡げないことが結核対策の定石ですが、感染症法に基づきさらには感染し保菌してしまった人の診断・治療(潜在性結核感染治療)にも力をいれているところです。迅速かつ確実な抗酸菌検査の実施、インターフェロンγ遊離試験による結核感染診断はむろんのこと応用した診断法の開発、これまで診断が難しかった胸膜炎への胸腔鏡診断、難治である特殊な病態への外科的手術やその他の介入方法など一般的な結核から難治結核にも対応できる専門的な人材とキャパシティーがあります。
しかし結核は早期発見・早期治療し、適正な方法で治療すること、治療はやり遂げることがなにより大事です。患者さんと社会へのダメージを最小にするチーム医療を提供します。
皆様へのメッセージ;結核は慢性の経過と思われがちですが、実は自覚症状がでた時点ではかなり進んでいます。とくに高齢の方が、なんとなく食欲がなくなり、動きが悪くなったかなと思っていると、発熱し、医療機関でレントゲンを採りますと影があり、まず肺炎と診断されますが痰を調べると結核菌が見つかるなんてことが、結構多いです。痰を調べていないと進行して抜き挿しならぬ状況になります。早く発見することが大事です。

非結核性抗酸菌症

 結核菌は抗酸菌という大きな菌のグループに所属しています。抗酸菌の中の代表格が結核菌ですが、結核菌以外の抗酸菌は何十種類もあります。これらの結核菌以外の菌を非結核性抗酸菌といいます。
現在、日本ではこの非結核性抗酸菌による感染症(非結核性抗酸菌症)が徐々に増加しています。結核の罹患率は人口10万対14.4(2015年)ですが、非結核性抗酸菌の罹患率はj咽喉10万対14.7(2014年)といわれ、後者の年間発病者数はすでに前者よりも増えています。非結核性抗酸菌症は、結核のようにどんどん進行することはあまりなく、結核と違って他人へうつることはありません。日本の非結核性抗酸菌症の8割くらいはMycobacterium avium complex:マイコバクテリウム アビウム コンプレックス(MAC:マック)と呼ばれる菌でしめられています。
肺MAC症には、大きく分けて二つのタイプがあり、一つは、肺に空洞などの壊れた部分がある人に起きるものです。もう一つは、特別の病気もなかった中高年の女性の方に多いタイプで、肺の特別な場所(中葉舌区)に起こりやすいものです。多くは慢性気管支炎とか気管支拡張症などの病名をつけられています。この後者のタイプが増えています。
肺MAC症の治療は難しくて、結核と異なり確実に効く薬はまだありません。結核に使う薬を中心に3〜4種類の薬を組合せて、何とか軽くすることを目標にしています。早い段階で発見されれば外科的に病気の部分を切除するのが最も効果的な場合もあります。結核菌より病原性は弱い菌ですが、結核よりはるかに頑固な菌なのです。
東京病院では、非結核性抗酸菌症の新しい入院患者さんは10年前では年間約30人でしたが最近は年間約100人と3倍以上に増えており、約700人の患者さんが通院しています。東京病院は内科的外科的な治療や多くの研究を行っており、日本で有数の非結核性抗酸菌症診療を行える施設です。

肺アスペルギルス症

 肺アスペルギルス症の原因菌であるAspergillusは環境常在菌で室内空中浮遊菌としてどこにいてもおかしくない真菌(カビ)です。
肺アスペルギルス症は白血病などに代表される血液疾患や免疫抑制剤などによる治療で免疫が抑制されている患者さんに比較的急速に発症する場合と、明らかな免疫抑制状態ではないものの、肺結核や非結核性抗酸菌症、肺気腫、間質性肺炎、気管支拡張症などといった肺に基礎疾患がある患者さんに、空洞やのう胞といった肺の構造が壊れている部分に空中浮遊菌であるアスペルギルスが入り込んでしまい病変をつくる場合があります。
症状としては咳、痰、血痰、喀血、発熱、やせといったものが見られます。
治療は病変が肺の一部に限局している場合は外科的治療(手術)を行った上で完治をめざしますが、肺に基礎疾患があり呼吸機能が悪い患者さんでは肺切除はできないことも多いため、内科的治療が長期に必要になる場合もあります。肺アスペルギルス症の治療薬は以前は2種類程度しかありませんでしたが、ここ数年のあいだに新規の抗真菌薬が複数発売となり、内科的治療についても選択肢が増えました。
当科は肺アスペルギルス症の治療において日本でも有数の豊富な経験を有し、呼吸器外科と連携をはかりながら治療にあたっています。

HIV

 HIV感染症はヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV)の感染症です。
HIVは主にCD4陽性Tリンパ球に感染し、この細胞を破壊してしまいます。この細胞は細胞性免疫という免疫機能を担っているので、この細胞が壊されると細胞性免疫の機能が著しく低下することになります。その結果、いろいろな感染症にかかりやすくなり命を落とすこともあります。
しかし、HIV感染症の治療薬の進歩はめざましく、現在の最強の薬剤を組み合わせることにより、予後が格段に改善しました。今ではHIV感染症は高血圧症や糖尿病のように薬を飲まなければいけないが日常生活は普通に送れる「慢性疾患」に近い状態になりつつあります。治療はよくなったのですが、日本のHIV感染者数は年間1500人前後の横ばい状態です。HIV感染者を増やさない努力も必要です。
東京病院はエイズ拠点病院の一つとして、エイズ診療を行っています。薬を飲むことにより、多くの方は元気に通院されています。東京病院では、とくに結核を合併したエイズ患者さんの治療ではわが国有数の症例数を経験しており、HIV感染症合併結核についての臨床と研究を積極的に行ってきました。日本は結核については中まん延国です。HIV感染者数が減少していない状況下では、HIV感染症合併結核の症例も減少しないと思われます。
東京病院は呼吸器内科病床300床を抱えていますので、結核合併例だけでなくニューモシスチス肺炎、非結核性抗酸菌症など他の呼吸器疾患合併HIV感染症の患者さんも多数受け入れています。また、エイズ患者さんの緩和ケア病棟への受けいれも積極的に行っています。

気管支喘息

 気管支喘息は、気道のアレルギー性炎症により気道狭窄および気道過敏性をきたし、咳嗽、喘鳴、呼吸困難などの症状を有する疾患です。吸入ステロイドを始めとする喘息治療薬の進歩および喘息ガイドラインの普及により、喘息発作で入院する患者数は減少し、喘息死亡者数も近年3000人を下回るようになってきています。
一方で、喘息有病率に関しては年々増加しており現在国内に数百万人の患者がいると言われており、今後も喘息患者はますます増加することが予想されております。
気管支喘息治療の目標は、健常人と変わらない日常生活が送れるようになることであり、そのためには適切な診断、治療、管理が必要になってきます。治療の基本は吸入ステロイドを中心とした抗炎症治療ですが、最近では難治性喘息の患者さんに抗IgE抗体が適応になるなど近年の治療薬の進歩には目を見張る者があります。
当院では、標準的な治療はもちろんのこと抗体治療などの最新の治療や同意の得られた患者さんには治験レベルの治療も積極的に行い、多くの方々が安心できる日常生活を送る手助けになるよう心がけております。
また、平成20年より当院に新しく発足したアレルギー科と連携し、より質の高い医療の提供ができるようになってきました。

睡眠時無呼吸症候群

 睡眠時無呼吸症候群(閉塞型)は、夜、睡眠中に呼吸が止まるため酸素が不足し、息が苦しく覚醒して日中の眠気を引き起こす病気です。大まかに言うと、肥満で気道が狭くなる方と顔の構造上気道が狭くなりやすい方の2通りあります。
自宅でもできる簡易検査と病院に泊まって脳波も含めて検査を行う精密検査の2通りあり、これらの検査で診断と重症度を決定し、治療します。横向きに寝る癖をつけるだけで無呼吸がなくなる方もいますが、重症度が増すと夜間睡眠時にマウスピースを噛んで寝たり、CPAPという密着する鼻マスクをつけて寝たりといった治療が必要になります。中には手術が有効な方もいます。
簡単な検査で診断でき、治療法もある病気ですので、いびきをかく方、呼吸が止まっているといわれたことのある方は外来を受診してみてください。

慢性呼吸不全

 肺や胸郭の病気により肺の機能が低下すると、エネルギーを造るのに必要な酸素が不足するか、体で作られて肺から排出されるべき二酸化炭素が体内に貯留するか、場合によってはその両方が起こります。細胞が正常に機能を営むのに必要な酸素が不足する状況が呼吸不全で、治療により改善せず、1ヶ月以上続くと、慢性呼吸不全という病態になります。
酸素が足りないときは酸素の吸入を行い、二酸化炭素が高いときは人工呼吸を行います。場合によってはこれらを入院中のみでなく、自宅でも継続する場合もあります。
当院では、在宅酸素療法を施行している患者さんが300人以上、在宅人工呼吸を使用している患者さんが、70人程度います。酸素を使用しながら生活することは、不便な面もありますが、息切れや低酸素を改善して、楽に日常生活を送れるという積極的な面があります。
当院では年2回5月と10月に患者さんが集う場、勉強の場として、在宅酸素の会を催しております。気軽な会なので、ご興味のある方はご参加ください。また、息切れの改善や、日常生活動作の改善、安定した日常生活のために、呼吸リハビリも行っています。


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