感染症
呼吸器感染症の代表は肺炎です。細菌性肺炎やマイコプラズマ肺炎など、いろいろな病原体による肺炎の治療を行っています。高齢化社会になり、高齢者の誤嚥性肺炎も多くなっていますので、注意が必要です。死因統計によると肺炎は2011年に脳血管障害を抜いて初めて死因の第3位になりました。死亡例のほとんどが高齢者です。高齢者を肺炎から守るためには肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの接種が必要です。両ワクチンの接種を積極的に勧めています。
当院は結核病床を100床持っており、東京地区の結核病床全体の約25%を担っています。結核患者数は年々減少していますが、結核罹患率人口10万対14.4という数字はまだまだ高く、日本は世界の中では結核の中まん延国です。このように結核は常に身近に存在するにもかかわらず、診断が遅れる場合があります。当院は結核については日本有数の経験を誇る施設であり、結核医療を中心的に担ってきた病院の一つです。今後も、積極的に受け入れて参ります。
結核菌の仲間の「抗酸菌」が引き起こす、結核とよく似た症状の病気を「非結核性抗酸菌症」と言います。国内では、この病気の患者さんが、少しずつ増えています。結核は急速に進行しますが、非結核性抗酸菌症は、「年単位」と言われるほど進行が遅い場合がほとんどです。国内の非結核性抗酸菌症の約8割以上は、「MAC(マック)菌」が原因の「肺MAC症」です。肺MAC症は、特別に病気のない中高年女性に増えています。治療を根気よく続け、病気と長く付き合う気持ちが必要です。当院は非結核性抗酸菌症の経験も豊富であり、外来にたくさんの患者さんが通院されています。
結核の後遺症として肺アスペルギルス症というカビの病気(真菌症)があります。結核がなおった後に、肺に残った空洞にカビがついて炎症を引き起こす病気です。他にも肺のう胞や気管支拡張症などの空洞様の部分にカビがつくことがあります。慢性の咳、痰以外に血痰や喀血が起こることがあり、治療が難しい病気です。当院は肺アスペルギルス症についても経験が豊富であり、手術を含めたあらゆる病状に対応可能です。
当院はエイズ拠点病院の一つとして、エイズ診療を行っています。薬を飲むことにより、多くの方は元気に通院されています。とくに結核を合併したエイズ患者さんの治療ではわが国有数の症例数を経験しており、HIV感染症合併結核についての臨床と研究を積極的に行っています。